大量のコーヒーは、いったいどこから来るの?

世界中の大手チェーンを支える驚きのサプライチェーン

毎朝何気なく飲んでいる一杯のコーヒー。スターバックスやその他多数のチェーンで日々とんでもない量のコーヒーが淹れられているのは、みなさんご存じでしょう。
でも、そのコーヒー豆が「いつ、どこで、誰の手によって」育てられ、どんなルートを辿ってあなたのカップに注がれているか、想像したことはありますか?

世界中に何百、何千、時には何万軒もの店舗を抱える大手コーヒーチェーンは、一日に何百万杯ものコーヒーを販売することも珍しくありません。そんな“ビッグスケール”のコーヒー業界は、ちょっと覗くだけでも驚きの連続です。今回は、大手チェーンが使うコーヒー豆のグレードから、その膨大なサプライチェーンの仕組みまで、初心者でもわかるように解説してみましょう。最後には、2050 COFFEEの視点を交えながら、“未来にもおいしいコーヒーを残すために”今どんな取り組みが必要か考えてみます。


 

大手チェーンのコーヒー豆、実際どのレベル?

コーヒー豆には、大きく分けて「コモディティ(一般流通品)」と「スペシャルティ(品質評価が高い特別な豆)」というグレードがあります。大手チェーンはたいてい、「コマーシャルグレード」と言われる豆を大量に購入し、味を安定させるために大きな焙煎工場で一括加工しています。

もちろん、「100%アラビカ種」などを掲げて、質の高い豆を使っているとアピールする企業も多いです。けれども、想像を絶する量を扱う以上、「最高級のスペシャルティ豆だけ」というわけにはいきません。欠点の少ない優良品をできるだけ集めつつ、深めに焙煎して味のばらつきを抑える。この方法で、「どこの店に行っても同じ味」をキープするのです。

とはいえ、決して“粗悪な”豆を使っているわけではありません。むしろ、独自の品質基準を設けて、「大量に買いつつ、最低限以上のクオリティは確保する」という戦略をとるチェーンがほとんど。結果として、「スペシャルティほどの個性はないけれど、安定して美味しい」と評価されるわけです。

 


どこから、どんなルートで仕入れているの?

コーヒーは、いわゆる「コーヒーベルト」と呼ばれる熱帯~亜熱帯の地域でしか育ちません。ブラジル、コロンビア、グアテマラなどのラテンアメリカ、エチオピアやケニアといったアフリカ、そしてベトナムやインドネシアなどのアジア太平洋地域…。こうした国々から、大手チェーンは複数の産地をミックスして膨大な量の豆を買いつけます。

仕入れ方法は、各社が独自に構築した世界的ネットワークを駆使するのが一般的。大量に必要な分、バイヤー(買い付け担当)が各産地を巡って契約農家や協同組合と交渉し、数カ国・数十万軒もの農家からコーヒー豆を集めることもあります。生産地ごとに収穫時期が違うため、世界のどこかが不作でも他の地域で補うことで、通年で安定供給が可能になります。

近年は「サステナブル」「エシカル」といったキーワードも広がり、大手チェーンでも「フェアトレード」「レインフォレスト認証」「独自の倫理基準」などを謳う例が増えました。農家と長期契約を結んで、価格が急落しても“適正な買い取り”を保証することで、農家の収入と生活を支えようという狙いもあります。ただし、実際にそれがどこまで完璧に機能しているかは、企業や国によって温度差があるのも事実です。

 


大規模焙煎と物流の超効率化

「大量のコーヒー豆を買う→各国の焙煎工場に送る→一括で焙煎・パッケージ→世界中の店舗へ」。この工程を“いかに効率よく、しかも一定の品質を維持したまま”回すかが、大手チェーンの腕の見せどころです。

たとえば、アメリカやヨーロッパ、アジアなどに大規模な焙煎拠点を構え、そこで何十トンもの豆をまとめてロースト。一度に大量に焙煎すればコストを抑えられますし、味や香りも“大手チェーンの標準”に仕上げることが可能です。焙煎後は自社または提携の物流システムを使い、各国・各店舗に必要量を振り分けます。

店舗のオーダー状況をリアルタイムで把握し、在庫が足りなければすぐ出荷。逆に売れ残りを最小限にするため緻密に需要予測を行うなど、IT技術の活用も進んでいます。大量仕入れをするからこそ、船舶やコンテナ輸送での運賃交渉も有利。こうした仕組みの積み重ねが、毎日世界中の店先で欠かさずコーヒーを提供する「巨大チェーン」の原動力なのです。

 


 

大手チェーン方式の功罪:統一感と画一化

ここまで見ると、「すごく合理的で、消費者にも便利。いいことずくめじゃない?」という印象を受けるかもしれません。でも当然、いい面もあれば問題点もあります。

メリットは、まず何と言っても「安定と安心」。世界中どの店舗でも“外れの少ない”一杯が飲めるし、大手ならではの資金力で農家を支援するなど、「大きいからこそできること」も数多く存在します。大量生産・大量調達でコストを抑え、価格を比較的抑えられるケースもあるでしょう。

一方で、「画一化による味の個性が乏しい」というデメリットも。深煎りにすることで、産地ごとの特徴的な風味が埋もれてしまうことが多いのです。コーヒー本来の多様性や農園ごとのストーリーを楽しみたい人からすると、大手チェーンの豆は“優等生だけど個性に欠ける”と感じるかもしれません。

さらに、コーヒー相場が大暴落した際に「農家の収入は大丈夫なのか?」とか、「環境負荷はどうなの?」といった問題もあります。大量生産ゆえに森林開拓が進んだり、農薬使用が増えたりすれば生態系に影響が及びますし、気候変動の悪化によって将来のコーヒー栽培地そのものが縮小する危険もあります。

 


2050 COFFEEの視点:未来の一杯を守り抜くために

では、この“超巨大”なコーヒーサプライチェーンを「未来のコーヒー危機」にどう対応させるか。ここで注目されているのが、2050 COFFEEです。
「2050年までにコーヒー栽培に適した地域が半減する恐れがある」という研究は、コーヒー業界の大きな脅威として知られています。そんな中、2050 COFFEEは「コーヒーを通じて世界をより良い場所に」を掲げ、気候変動対策やフェアな価格設定、農家支援に積極的に取り組んでいるブランドです。

大量生産や大量調達の仕組みを全面的に否定するわけではなく、むしろそうした大規模チェーンの力を活かしながらも、生産現場が置き去りにならないよう「正当な対価」「環境配慮」「技術革新」をうまく組み込むことが鍵だと考えています。農家と直接提携して新品種の栽培をサポートしたり、収益の一部を農地の改良や森林再生プロジェクトに回したりするなど、すでに各所で具体的なアクションが始まっています。

実際、「2050年にはコーヒーが贅沢品になる可能性がある」という不安を打ち消すには、世界規模のチェーンの協力や消費者の意識が欠かせません。農家が安心してコーヒーを育て続けられる仕組みを作り上げれば、「大手チェーンでもサステナブル」「味の個性も大切にする」コーヒー世界が実現できるかもしれないのです。

 


 

私たちのコーヒー、どこからどうやって来る?

何万軒もの店舗を抱える巨大チェーンは、良質なアラビカ豆を世界中から買い集め、深煎りなどで味を一定に仕上げ、巨大な焙煎工場や物流網を駆使して、日々数百万杯のコーヒーを送り出しています。これはまさに“ビッグビジネス”であり、私たち消費者にとっては「いつでもそこそこ美味しいコーヒーが飲める」ありがたい仕組みでもあります。
一方で、その舞台裏では生産者への賃金の問題や環境負荷、味の画一化など、見過ごせない課題も潜んでいます。

コーヒーが当たり前のように飲めるのは、生産国の豊かな自然と農家さんのおかげ。その未来を守るためには、大手チェーンも小規模ロースターも、そして私たち消費者一人ひとりも、「今のカップがどんな道のりを経てきたのか」を少し考えてみる必要があるのかもしれません。

そして、2050 COFFEEというブランドの存在は、そんな“コーヒーの行く末”を考えるきっかけになるはずです。大量生産・大量消費の仕組みをどうアップデートし、持続可能で魅力的なコーヒー文化を広げていくのか。私たちが飲む一杯は、その答えの一歩につながっています。

 


 

参考文献

  • Hoogeveen, Martijn. “The Specialty Coffee Trend: Why Starbucks Loses Market Share.” Iceclog (2024).

  • Oden, Garrett. “Starbucks VS Specialty Coffee: What's The Difference?” JavaPresse Coffee (n.d.).

  • Starbucks Coffee Company – Ethical Sourcing. (Official page)

  • Jaen, Caryl E. “Here's Where The Majority Of Starbucks Coffee Is Sourced From.” Food Republic (2023).

  • “Where Does Starbucks Really Get Their Coffee From?” The Coffee Chronicler (2023).

  • “Starbucks invests $130m in roasting facility to support growth in China.” World Coffee Portal (2020).

  • Wikipedia – “Starbucks” (accessed 2025).

  • Brown, Nick. “Research Says Climate Change to Erase More Than 50% of Suitable Coffee Land by 2050.” Daily Coffee News (2022).