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あなたのコーヒーで、本当に儲けているのは誰? 5ドルの一杯を農園までたどる

あなたのコーヒーで、本当に儲けているのは誰? 5ドルの一杯を農園までたどる

▶ 動画:Who Actually Makes Money From Your Coffee?(英語・日本語字幕あり/約7分半)

※字幕は、YouTubeの設定から「日本語」を選んでください。

コーヒーの国際価格は、2025年に史上最高値をつけました。

それなのに、コーヒーを育てる人の多くは、今も生活が苦しいままです。

「じゃあ、そのお金はどこへ行ったの?」

カフェで一杯のコーヒーを買うとき、そう考えたことはあるでしょうか。仮に、その一杯が5ドルだったとします。そのうち、コーヒーを育てた農家に届くのは、数セントです。

では、残りは誰が持っていったのか。カフェが儲けすぎているのか。大企業なのか。それとも、どこかに悪い誰かがいるのか。

先に結論を言えば、犯人は「誰か」ではありません。コーヒーという貿易そのものの「かたち」です。 チェーンの一つひとつには、ちゃんとした仕事とコストがあります。それでも、つなげてみると、お金が農園まで戻らない構造になっている。そしてその構造は、2050年に私たちのカップにおいしいコーヒーが残っているかどうかにも関わってきます。

今回は、動画と同じ順番で、5ドルを一つずつさかのぼっていきます。カフェ、焙煎所、商社、ニューヨークの相場、生産国の中の流通、そして農園へ。

※この記事では、動画と同じく分かりやすさのために「一杯5ドル」で考えます。以下の5ドルの内訳は、一般的なカフェのコスト比率をもとにしたイメージ(例示)で、特定のお店の数字ではありません。

カフェは儲けすぎているのか?

最初の場所は、カフェです。あなたが払ったお金のほとんどは、ここに残ります。

でも、カフェが大儲けしているわけではありません。5ドルの一杯を、ざっくり分けるとこうなります。

5ドルの行き先(例示) 目安
ドリンクをつくる人の人件費 約1.5ドル
家賃 最大1ドルほど
ミルク、カップ、電気、清掃など 残りの多く
カフェの利益 30〜50セントほど(うまくいった日で)
カップの中のコーヒー豆 20〜40セントほど

つまり、5ドルのほとんどは、お店の外に出ません。農園のほうへ向かうお金は、この時点ですでに小さいのです。

コーヒーの値段が上がり続ける背景については、以前の記事「一杯のコーヒーは、もう「安く」はならないのか。」で詳しく書きました。今回はその先、カップの外のチェーン全体を見ていきます。

ひとつだけ、ここで押さえておきたいことがあります。カップの中の豆の割合が小さいということは、裏を返せば、一杯の値段が上がっても、それが農家の収入になるとは限らないということです。

焙煎所:数社の巨大企業が、条件を決める

その20〜40セント分の豆は、焙煎所から来ました。

焙煎所は、緑色の生豆を、私たちの知っている茶色い豆に変える場所です。近所の小さなロースターもあれば、世界規模の巨大企業もあります。

ある推計(ING/Euromonitor、2022年)では、世界の小売のコーヒー市場(金額ベース)のおよそ22%を、ネスレ1社が占めています。お店で使われるコーヒーへのお金の、だいたい5ドルに1ドルです。

大手の焙煎会社は、とてつもない量を買います。そして、それだけ買う相手には、売る側の誰もが条件を合わせることになります。価格、品質、納期、支払いのタイミング。規模は、そのままルールを決める力になります。

商社:名前を知らない、でも欠かせない会社

焙煎所の手前では、コーヒーは商社によって売買されています。

Ofi、ルイ・ドレフュス、ノイマン、スカフィナ。コーヒーを毎日飲んでいる人でも、ほとんど聞いたことのない名前だと思います。

でも、その影響は大きい。サプライチェーンを分析するTraseによると、2020年には、わずか10社が世界のコーヒー輸出の約3分の1を扱っていました。さらにCoffee Barometerは、今では5社の商社が生豆取引の約半分を扱っている可能性があると推計しています(あくまで推計です)。

もちろん、商社が楽をして儲けているという単純な話でもありません。コーヒーを農園から港へ、港から焙煎所へ運ぶ。生産者や輸出業者にお金を貸す。価格が動くリスクを引き受ける。これは本当の仕事で、本当にお金がかかります。

ただし、商社が農家に払う価格の「出発点」は、まったく別の場所にあります。

コーヒーの価格は、どこで決まるのか?

答えは、農園ではありません。ニューヨークの画面の上です。

ICE(インターコンチネンタル取引所)のアラビカ「C」契約、いわゆるコーヒー先物の価格が、世界のアラビカコーヒーの取引の基準になっています。

この画面の上では、商社、焙煎会社、そして投資ファンドが、毎日コーヒーの契約を売買しています。その多くは、一粒のコーヒー豆にも触れることはありません。ファンドが買い込めば価格は跳ね上がり、手を引けば下がる。そして、その揺れはすべて農家に届きます。

その揺れ幅は、想像以上です。

  • 2001〜2002年、コーヒーの価格は実質ベースで約100年ぶりの安値まで落ちました(ICO、FAO)
  • 2025年には、1ポンドあたり4ドルを超える過去最高値をつけました(2月に4.24ドル、10月に4.38ドル。Reuters、Bloomberg)
  • そして2026年10月30日時点では、約2.87ドル。3ドルを下回っています

倍近くに上がったかと思えば、3分の1ほど下がる。過去最高値。じゃあ、農家は大儲けしたはず……でしょうか?

その答えの前に、もうひとつ見ておきたいチェーンがあります。

生産国の中にある、「見えないチェーン」

コーヒーが育つ国の中にも、私たちからはほとんど見えない流通があります。仕組みは産地によって違いますが、多くの小規模農家の場合、だいたいこんな流れです。

  1. 農家が、赤く熟したコーヒーチェリーを摘む
  2. その日のうちに、地元の仲買人(コレクター)に売る。チェリーは傷みやすく、そして現金がすぐに必要だから
  3. 仲買人は精製所(ミル)に売る。ミルは果肉を取り除き、豆を乾燥させる
  4. ミルは輸出業者に売る。輸出業者は豆を格付けし、袋に詰め、船に積む

それぞれの段階が、取り分を取ります。そして、それぞれに本当のコストがあります。トラック、乾燥場、倉庫、借りたお金の利息。

その結果、多くの農家が受け取る価格は、だいたいこう決まります。

ニューヨークの画面の価格 ± 品質や産地による上乗せ・値引き − 農園から港までの各段階の分

ここで、スペシャルティコーヒーは少し違います。品質にきちんと対価を払う買い手は、画面の価格よりかなり高い価格で合意します。Specialty Coffee Transaction Guideによると、2024年のC価格の平均が1ポンド約2.35ドルだったのに対し、スペシャルティの取引価格の中央値は約3.48ドルでした(FOB、つまり輸出港での価格で、農家の手取りそのものではありません)。

しかも、その価格は、お互いの名前を知っている人同士で、前もって決められます。画面が暴落しても、一緒に暴落するとは限りません。

ただし、スペシャルティはまだ、世界のコーヒーのごく一部です。ICOの推計で世界に約1,250万あるコーヒー農園の多くにとって、その年を決めるのは、今もニューヨークの画面です。

過去最高値で、農家は大儲けしたのか?

さて、さっきの問いに戻ります。

もちろん、良くなった農家もいます。ただし、肥料も、人件費も、輸送費も上がりました。そして、倍になったかと思えば3分の1下がる価格では、計画を立てることも、設備に投資することも、木を植え替えることも、ほとんどできません。

コロンビア、ホンジュラス、グアテマラの農家を調べた2024年の研究(Frontiers in Sustainable Food Systems)では、4分の1から半分の農家が、コーヒーを育てる費用をすべてまかなえていませんでした。

多くの産地では、若い人たちが都市へ出ていっています。生活できない農園は、次の世代に引き継ぐのが難しい。それは、農家だけの問題ではなく、10年後、20年後のコーヒーそのものの問題です。

5ドルの話に戻ると、農園にたどり着くころ、それは数セントになっています。

なぜでしょうか。

答えは、貿易の「かたち」にある

ここまで見てきたように、チェーンの一つひとつに悪者がいるわけではありません。カフェも、焙煎所も、商社も、仲買人も、それぞれにコストを抱えて仕事をしています。

問題は、つなげたときの「かたち」です。

コーヒーの多くは、育った国から、加工されていない生豆のまま出ていきます。そして、価値の大部分は、国を出たあとに加えられます。焙煎、ブランドづくり、そしてカフェ。いちばん稼ぐ段階の多くは、コーヒーを育てる国ではなく、飲む国で起きているのです。

ICOとUNCTADは2020年に、コーヒー産業全体はおよそ2,000億ドル規模で、そのうち生産国に残るのは1割に満たないと示しています。(これは生産国全体の話で、「農家の取り分が1割」という意味ではありません。)

このかたちは、何世紀も前にできたものです。そして、ほとんど変わっていません。

農家の取り分を倍にしたら、一杯いくら高くなる?

ここで、ほとんど誰も聞かない問いを立ててみます。

農家の取り分を倍にするには、あなたはいくら多く払えばいいのでしょうか?

私たちの試算はこうです。

  • 一杯に使うコーヒーは、焙煎豆で約15g。焙煎で重さが減るので、生豆にすると約18g前後です
  • これを過去最高値の頃の相場で計算すると、一杯分の生豆の価値は約15セント(14〜17セントほど)。2026年10月末の相場なら、11〜12セントほどです
  • 農家の取り分は、このさらに一部です
  • だから、農家がその一杯から得るものを倍にしても、上乗せはだいたい10セント

10セント。オーツミルクに変えたり、サイズを大きくしたりするほうが、よほど高くつきます。

でも農家にとっては、その10セントが、自分のコーヒーが変わっていくすべての杯の数だけ積み重なります。それは、木を植え替えるか、あきらめるかの差になりうる金額です。

※これは、相場価格をもとにした私たちの大まかな計算です。産地や品質、取引の形によって大きく変わります。また、「10セント上乗せすれば農家に届く」仕組みが、今あるわけではありません。

つまり、農家の問題は「あなたのコーヒーが安すぎること」ではありません。あなたが払うお金のほとんどが、そこまで届かないことなのです。

なぜ、すぐに直せないのか?

では、なぜ直せないのか。

価格を決めているのが、あなたでも、カフェでも、農家でもないからです。決めているのは、仕組みです。契約、ニューヨークの画面、そして貿易全体のかたち。誰か一人が「もっと払おう」と決めても、その分がそのまま農家に届く道は、多くの場合ありません。

そして今、そこに新しい圧力が加わっています。気候変動です。コーヒーを育てるのは難しくなりつつあり、その影響をいちばん受けるのは、いちばんお金のない農家がいる場所です。

たとえばブラジルは、世界のコーヒーの約3分の1を生産しています(USDA、2025/26年度の予測)。私たちが公開されている気候データを使って行った簡易的な分析では、2050年ごろまでに、今アラビカが育つブラジルの土地の約半分が、暑すぎるなどの理由で適さなくなる可能性がありました。(一つの気候モデルとシナリオにもとづく簡易モデルで、研究によって数字には幅があります。最新研究の整理は「コーヒー2050年問題とは?」にまとめています。)

気候に適応するには、お金がかかります。新しい品種、日陰をつくるシェードツリー、新しい土地。そして、いちばん適応が必要な農家ほど、今の仕組みの中でいちばんお金が残らない立場にいます。

新しいモデルは、生まれつつある

それでも、変えようとする動きはあります。

  • 生産国が、自分たちで焙煎して飲む。 価値が加わる段階を、生産国の中に取り戻す動きです。たとえばブラジルは、年間約2,100万袋(1袋60kg)を国内で消費する、世界有数のコーヒー消費国でもあります(ABIC、2025年)。(関連記事:生産国が焙煎する時代へ。コーヒーの価値は、どこに残るのか)
  • 相場ではなく、直接価格を決める。 ニューヨークの画面に連動させず、買い手と農家が直接、前もって価格に合意する取引です。
  • 品質に対価を払う。 スペシャルティのように、品質で価格が決まる市場を広げることです。

正直に言えば、このどれが大きな規模で機能するのかは、まだ誰にも分かっていません。

でも、ひとつだけ確かなことがあります。あなたのカップの中のコーヒーは、ここから遠く離れた誰かが、それを育て続けられることにかかっている、ということです。

よくある質問(FAQ)

Q. コーヒー一杯の価格の内訳は?
A. カフェの一杯の場合、多くは人件費、家賃、ミルクやカップ、光熱費などのお店のコストです。一般的なコスト比率で見ると、5ドルの一杯のうちカップの中のコーヒー豆は20〜40セントほどで、カフェの利益は30〜50セントほどです(例示)。

Q. コーヒー農家の取り分はどれくらい?
A. 一杯あたりの農家の取り分を示す、公的な統一データはありません。私たちの試算では、一杯に使う生豆の価値は相場価格で約11〜17セントで、農家に届くのはそのさらに一部、数セント程度です。

Q. コーヒーで儲けているのは誰?
A. 特定の「誰か」ではありません。焙煎、ブランド、カフェなど、価値の大部分が加わる段階の多くが、コーヒーを飲む国で行われる貿易の「かたち」が大きな理由です。ICOとUNCTADは、約2,000億ドルのコーヒー産業のうち、生産国に残るのは1割に満たないとしています。

Q. 農家の取り分を倍にすると、一杯いくら高くなる?
A. 私たちの大まかな計算では、約10セントです。一杯分の生豆の価値が相場価格で15セント前後で、農家の取り分はその一部だからです。ただし、その上乗せ分を確実に農家に届ける仕組みづくりが、本当の課題です。

2050 coffeeが目指すもの

2050 coffeeは、「2050年にもコーヒーを楽しめる未来」をつくるためのブランドです。私たちは、コーヒーの未来をつくるイノベーションを、種・品種・栽培・精製・産地という5つの領域で見ています。そしてそのイノベーションは、貿易の「かたち」と切り離せないと考えています。

1. 産地との関係を、「相場」だけで決めない
暑さに強い種や品種、新しい栽培や精製に挑戦するには、生産者に時間とお金が必要です。ニューヨークの画面の数字だけでなく、その挑戦の価値で産地と向き合うこと。小さなブランドにできることは限られていますが、そこから始めたいと思っています。

2. 一杯の背景を、仕組みごと伝える
「おいしい」の裏には、今回見てきたような長いチェーンがあります。誰が悪いという話ではなく、どういう仕組みで、どこに課題があるのか。良い話だけでなく、難しさも含めて伝えていきます。

3. テクノロジーで入口を広げ、生まれた時間を人に使う
2050 coffeeのタップは、新しいコーヒーを気軽に試せる入口です。テクノロジーで生まれた時間は、一杯の向こう側にいる人たちの話をする時間に使います。

一杯のコーヒーの値段を、ただ高い・安いで見るのではなく、そのお金がどこへ流れていくのかを想像してみる。それが、コーヒーの未来を一緒につくる最初の一歩だと思います。

Build the future of coffee, together.

出典

  • 5ドルの内訳(例示):一般的なカフェのコスト比率(英国・豪州のカフェ業界ガイド)をもとにしたイメージ。特定店舗の数字ではない
  • ネスレ 世界の小売コーヒー市場(金額)の約22%(2022年):ING/Euromonitor の推計
  • 上位10社で世界のコーヒー輸出の約3分の1(2020年):Trase(Daily Coffee News, 2026年9月の報道経由)
  • 商社5社で生豆取引の約半分:Coffee Barometer の推計
  • ICE アラビカ「C」契約が国際的な基準価格であること、2001〜2002年に実質で約100年ぶりの安値:International Coffee Organization(2003年プレスリリース)、FAO
  • 2025年の過去最高値:Reuters(2025年2月10日、取引時間中4.24ドル/lb)、Bloomberg(2025年10月23日、4.38ドル/lb)
  • 2026年10月30日の価格 約2.87ドル/lb:ICE アラビカ先物
  • 2024年平均 C価格 約2.35ドル/lb、スペシャルティ取引価格の中央値 約3.48ドル/lb(FOB):Specialty Coffee Transaction Guide 2024(2025年2月公開)
  • 世界のコーヒー農園 約1,250万:International Coffee Organization の推計
  • 4分の1〜半分の農家が生産コストをまかなえていない(コロンビア、ホンジュラス、グアテマラ):Frontiers in Sustainable Food Systems(2024年)
  • コーヒー産業 約2,000億ドル、生産国に残るのは1割未満:ICO/UNCTAD プレゼンテーション(2020年2月)
  • 一杯分の生豆の価値(約11〜17セント)、農家の取り分を倍にした場合の上乗せ(約10セント):2050 coffee による試算(焙煎豆15g ≒ 生豆17.6〜18.8g × 相場価格)
  • ブラジルが世界のコーヒーの約3分の1を生産:USDA FAS, Coffee: World Markets and Trade(2025/26年度予測、約6,500万袋/約1億7,900万袋)
  • ブラジルのアラビカ適地の約半分が2050年ごろまでに不適に:2050 coffee による簡易分析(WorldClim 2.1、1970〜2000年 vs 2041〜2060年、気候モデル MPI-ESM1-2-HR、SSP2-4.5、気温・降水・霜による簡易モデル)
  • ブラジルの国内消費 年間約2,100万袋:ABIC(ブラジルコーヒー工業協会、2025年)
  • 2050 coffee「Who Actually Makes Money From Your Coffee?」(YouTube, 2026年11月3日) https://youtu.be/Cmj8CP1NFs4
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